大学教授の実用ノートキャリアアップとくらしのトリセツ
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ライフ・キャリア公開:2026-11-01約8分で読めます

一人で走る。でも,一人ではない|駅伝に学ぶ,強いチームの条件

駅伝は,ひとりで走りながら,ひとりではない競技です。襷をつなげなかった仲間を,誰も責めなかった場面から,強いチームに必要な「個の力」と「結束力」,そして職場で今日からできる5つの工夫をまとめました。

🩺この記事のポイント

  1. 1強いチームには,自分の仕事に責任を持つ「個の力」と,仲間をつなぐ「結束力」の両方が要る
  2. 2仲間が努力を知っているから,失敗しても責めない。その信頼が「次こそ」の力になる
  3. 3「誰が」ではなく「どこで途切れたか」を見る。引き継ぎに「迷ったところ」を1行添える

駅伝は,不思議な競技です。

走っているあいだは,ひとりです。前にも後ろにも,助けてくれる人はいません。自分の足と呼吸だけで,決められた距離を走り切るしかありません。

それなのに,駅伝は「チームの競技」と呼ばれます。ひとりで走りながら,ひとりではない。この矛盾のような姿に,強いチームの条件が,そのまま詰まっていると,筆者は思っています。

この記事では,駅伝を長く走ってきた筆者の経験から,職場やチームに通じることを書きます。

強いチームには,二つの力が要る

強いチームには,二つの力が必要だと考えています。

一つ目は,個の力です。

それぞれが自分の区間に責任を持ち,力を磨くこと。駅伝でいえば,走る人が練習を積んで,自分の区間を走り切る力をつけることです。職場でいえば,担当する仕事に責任を持ち,専門性を高めることにあたります。

二つ目は,結束力です。

仲間を思いやり,同じ目標に向かって力をつなぐこと。駅伝でいえば,「自分の区間さえ良ければいい」ではなく,次に走る人,前を走った人,支えてくれる人のことを考えることです。

どちらかだけでは足りません。

力のある人を集めても,つながりがなければ,力はばらばらのままです。反対に,仲が良くても,それぞれの力が足りなければ,目標には届きません。個の力と結束力は,両方そろって初めて,チームの力になります。

走る人だけが,チームではない

駅伝のチームには,走る人以外にも,たくさんの人がいます。

全体の方針を決める監督。現場をまとめるキャプテン。給水や移動,記録,連絡など,運営を支えるスタッフ。そして,実際に走る選手たちです。

職場も同じです。

方針を示すリーダー。現場の空気をまとめる人。事務や運営で,仕事が回る土台を支える人。そして,仕事を担うメンバー。

どの役割が欠けても,チームは走れません。大切なのは,それぞれの役割が尊重され,お互いを信頼していることです。目立つ仕事をする人だけが偉いのではありません。支える人がいるから,走る人は走れます。

One for All, All for One

ラグビーで広く知られている言葉に,「One for All, All for One」があります。「一人はみんなのために,みんなは一人のために」という意味です。

この言葉で,筆者が大切にしたいのは,後半の「みんなは一人のために」です。

人は,「自分はこのチームに必要とされている」「仲間に大切にされている」と実感できたとき,自分から,仲間のために頑張ろうと思います。誰かに命じられたからではなく,自然に,です。

反対に,「自分は替えのきく部品だ」と感じている人に,仲間のために力を尽くせ,と言っても,心は動きません。

組織が一人ひとりを大切にすること。 その土台があるから,人は仲間のために走れます。「みんなのために」は,強制されて生まれるものではありません。「みんなが自分のことを大切にしてくれている」という信頼から,自然に生まれるものです。

襷をつなげなかった日

ここから,筆者の経験を書きます。

駅伝には,「繰り上げスタート」という,厳しい決まりがあります。大会によって細かい基準は違いますが,先頭から一定の時間が過ぎると,たとえ前の走者がまだ走っていても,次の走者が先にスタートしなければならない,というものです。そのとき,襷は,つながりません。

筆者は,仲間のそんな場面に立ち会ったことがあります。

次の走者が,中継所で待っている。中継所は,もう目の前に見えている。残り,あと10秒ほど。

しかし,あと少しというところで,時間が来てしまう。

走ってきた選手は,そこで,立ち止まります。あれほど必死に走ってきたのに,襷を渡せなかった。申し訳なさと,悔しさで,胸がいっぱいになります。

その選手の悔しさは,そばにいた者にも,痛いほど伝わってきました。

けれど,そのとき,仲間は誰も,その選手を責めません。

なぜか。仲間は知っているからです。その選手が,今日のために,どれほど練習を積んできたか。どれほど必死に,この区間を走ってきたか。だから,責める言葉は出てきません。

それでも,襷をつなげなかった悔しさは,消えません。 仲間が責めないからといって,悔しさが軽くなるわけではありません。むしろ,責められないからこそ,悔しさは深く残ります。

そして,その悔しさは,やがて,次への決意に変わります。

「次こそは,必ず,仲間に襷を渡したい」

筆者は,この気持ちこそが,チームを強くする原動力だと思っています。誰かに言われて生まれる気持ちではありません。仲間が自分の努力を知ってくれていて,責めずに受け止めてくれた。その信頼があるから,「この仲間のために,次こそ」と思えるのです。

仕事には,繰り上げスタートがない。だから見えにくい

日々の仕事には,駅伝のような繰り上げスタートはありません。時間が来て,強制的に襷が切られることは,ほとんどありません。

でも,よく考えてみてください。

仲間に仕事を,うまく引き継げなかったこと。期待に応えられなかったこと。プロジェクトを,思うように前に進められなかったこと。職場にも,「襷をつなげなかった」経験は,きっとあります。

仕事では,それが目に見える形で表に出ません。だから,ひとりで抱え込みやすいのです。

そのときに大切なのは,誰かを責めることではありません。

互いの努力を認めること。失敗から学ぶこと。そして,次は,もっとよい形で仕事をつなごうとすること。

責任感と,仲間への思いやりは,両立します。むしろ,両方そろっているチームが,強いチームです。責任を感じているからこそ悔しく,思いやりがあるからこそ,責め合わない。 この二つが一緒にあるとき,失敗は,チームが強くなる材料に変わります。

リーダーにできること

リーダーの役割は,メンバー一人ひとりの力を伸ばすことだけではありません。

もう一つ,メンバー同士の信頼関係を育てることも,リーダーの大切な仕事だと思います。

メンバーが「自分は必要とされている」と感じられる環境をつくる。困ったときには,お互いに支え合えるチームの空気を育てる。そして,仲間への献身が,強いられた自己犠牲ではなく,信頼から自然に生まれる状態をつくる。

精神論だけでは,チームは変わりません。明日から職場でできる工夫を,いくつか挙げます。

  1. 「誰が」ではなく「どこで」を振り返る
    うまくいかなかったとき,原因を人に結びつけず,「仕事の流れのどこで途切れたか」を一緒に見ます。責める場から,次に備える場に変わります。
  2. 引き継ぎに「迷ったところ」を1行添える
    完成した結果だけでなく,「ここで迷った」「ここは確認してほしい」を1行書くだけで,受け取る側は走りやすくなります。
  3. 努力を,名前を挙げて言葉にする
    「ありがとう」だけでなく,「あの資料の,あの部分を丁寧に整えてくれて助かった」と,具体的に伝えます。見ている人がいると分かるだけで,人は報われます。
  4. 役割を見える形にする
    リーダー,まとめ役,運営を支える人,担当するメンバー。それぞれが何を担っているかを共有し,目立たない役割にも,きちんと光を当てます。
  5. うまくいかなかったあとの一言を決めておく
    「次はどうつなごうか」を,責める言葉の代わりに置きます。言葉が決まっているだけで,空気は変わります。

どれも小さなことです。けれど,小さなことの積み重ねが,「ここにいていいんだ」という安心をつくります。

強いチームとは

強いチームとは,失敗しない人だけを集めた組織ではありません。

一人ひとりが自分の力を磨き,互いの努力を認め,たとえ襷をつなげなかったとしても,その悔しさを,次への力に変えられる組織です。

そして,仲間を思う気持ちが,個人の力を,チームの力に変えていきます。

最後に,一つだけ,問いかけさせてください。

あなたの職場で,いま襷を持って走っているのは,誰でしょうか。そして,その人の努力を,あなたは,どれだけ知っているでしょうか。

次に誰かが襷をつなげなかったとき,かける言葉を,今日のうちに,ひとつだけ考えてみてください。

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  • ✕今すぐ決断しなくてもいい状況の方
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無理に行動しなくても大丈夫です。自分のペースで,必要なときに戻ってきてください。

🖋 この記事の執筆・確認体制

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Team RESPECT医療関係者・医学研究者チーム

30年以上の大学での研究・臨床・教育経験を持つメンバーを含む運営チームが,公的機関のデータ・一次情報に基づいて執筆し,公開前に内容を確認しています。広告の掲載有無が記事の結論に影響しない編集方針をとっています。

監修:岡村 裕彦(歯科医師・岡山大学 教授)

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